つる植物のクズって、あの美味しい葛餅の葛といっしょ?なのかしら…。
雑草の葛≃葛餅の葛
ちょっと訳の分からない=を持ち出しましたが
≃←このイコールは漸進的に等しいという意味なのだそうです。
つまりあの美味しい葛餅は、
あの忌々しいつる植物の葛と同じと言ってよいということになります。
ちなみに「風邪のひき初めに葛根湯」の葛根って?
それも出所はあの忌々しい葛です。
葛って身近すぎるくらい身近ですが、なんだか用途はいろいろだし、すごいじゃんって感じですよね。
葛餅とは?
葛の根から採れるデンプンを原料としています。
葛の根から抽出した葛粉に水を入れて、
火にかけ、練っていくと透明~半透明なとろみが出てきて、
プルンという触感に!って…それってわらび餅?
なんでやねん!とツッコミが入りそうですが
ボケっとしていると葛餅をイメージしなが、らわらび餅をチョイスしてしまいそうです。
どちらも同じような艶と質感なんですもの。
それでは、亀江戸天神で有名な舟橋屋や、川崎大師で有名な住吉屋のくず餅って?
白濁色で、プルンというよりはもっちり固めな感じですよね。
こちらは葛餅とは書かずに久寿餅という字をあてて、
江戸時代から素材の違いを区別していたようです。
葛餅、わらび餅、久寿餅、またしても迷路に入り込んでしまいました。
3つの餅の謎解明
ちょっと大げさな気はしますが、ここで整理したいと思います。
・葛餅
吉野葛が有名ですが、吉野本葛は葛粉100%のもので、
吉野葛は葛50%+芋類など50%を混合したものを指すそうです。
吉野葛は商標登録されてるため、比率がはっきりしているんですね。
葛粉は、マメ科クズ属のつる性多年草の根を、
堀り子と呼ばれるプロの方が人力で堀り起こし、
葛の根は直径10㎝から、太いものでは50㎝の物が採れたりするそうです。
葛粉を水に撹拌すると牛乳のように白く混ざり(デンプンは水に溶けない)、
それを火にかけるとデンプンの糊化が進み半透明からだんだん透明になります。
冷めるとデンプンの老化が進み半透明になり、白濁色に変わります。
葛餅の触感はツルンとしていて、歯切れがよく柔らかいのが特徴ですね、
これは、葛のデンプンはアミロースが23%前後で、アミロペクチンが77%前後である、
ということが関係しています。
米に置き換えてみるとわかりやすくなりますが、
私たちが食べているお米はアミロースが18%前後、アミロペクチンが82%前後
海外のインディカ米はアミロースが30%前後、アミロペクチンが70%前後
もち米はアミロースが0%、アミロペクチンが100%
つまり、アミロペクチンの比率が多いほどデンプンの粘りが強くなることがわかります。
また、デンプンの粒子の大きさも触感や消化に関係してきます。
でんぷんの粒子が大きいほど、水分を多く吸い込み、粘りをつくり、
粒が大きいほど、早く粘りが出てきますが、
粘りが強かったり、粒子が大きいものは消化に時間がかかります。
葛粉の粒子の大きさは、5~20㎛で、
ジャガイモ(馬鈴薯)は2~80㎛なので、
かなりジャガイモの粒子が大きいことがわかります。
・わらび餅
わらび餅のわらびは、あの山菜の蕨なんですね、
コバノイシカグマ科ワラビ属のシダ植物です。
蕨の根からデンプンを抽出するわけですが、
葛と同様に人力で掘り起こします。
葛の根より細くて、太い物でも親指ほどでしょうか。
とても希少になってきていますので、本蕨は少なく、
蕨粉と称しつつ、大半がサツマイモなどのイモ類だったり、
葛が混ざっていたり、レンコン、タピオカ(イモ類か)だったり。
蕨粉を水に撹拌すると、グレーの白く濁った色になり、
それを火にかけるとデンプンの糊化が進み半透明に濁ったグレーが、
だんだん透明な茶褐色~黒っぽく色が澄んできます。
わらび餅の食感はわりと粘りがあって、プルンと柔らかいのが特徴ですが、
アミロースとアミロペクチンの比率が残念ながら判りません。
私の感覚ですが、葛よりアミロペクチンの比率が大きいと思います。
・久寿餅
久寿餅は、小麦デンプンからできて、
葛餅や蕨餅と少し製法が異なっています。
小麦粉を水で練ることにより、粘り気が出てきます。
粘った塊を水中でよく洗うと、デンプン分(浮き粉)とネバネバしたタンパク質成分であるグルテンが分離します。
抽出した小麦デンプンを水の入った樽で寝かせ1〜2年程かけて自然発酵させます。
寝かせる時間が長い程、乳酸菌が小麦のデンプンを酵素分解することにより、滑かな口当たりになります。
小麦のデンプンが粉々になることで、腸に負担なく吸収されます。
ただ、発酵が進むと酸味が出てくるため、次の工程として水洗いを行います。
発酵したデンプンを水に入れ攪拌し、上がってきた灰汁(あく)を取り、1日置くと、デンプンが沈下し水と分離します。
この作業を5日ぐらいかけて繰り返すことにより、程よい酸味になります。
このように手間をかけた小麦デンプンに水を入れ、攪拌しながら徐々に温めていくと均一なとろみの出た液状になります。
それを型に入れて蒸しあげると久寿餅が出来上がります。
最後に
それぞれ、素材は違いますが植物から抽出されたデンプンを使用してできていることがわかりました。
日頃草刈りを行なっている時、葛を厄介で大変だと感じつつ、このみじかな葛が、あの葛餅の素材であるのか、確かめてみたくなりこの記事に繋がりました。
途中脱線して色々な餅の話になりましたが、あながちくず餅と、わらび餅を取り違えるのも分からなくもない気がしてきました。
葛や蕨の根を、人力で掘り出してくる事の大変さから、徐々に希少な物となり、他の植物のデンプンと混ぜる、もしくは置き換えたものがお手軽に私達のおやつとして、コンビニやスーパーに売られていますので。
今度、本葛餅の出来立てを味わいに吉野へ行ってみたいと思います。